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きょうの一冊(白尾芽)

こんにちは、編集・執筆を担当している白尾です。
まだ暑かったり肌寒かったりして、気温差に体が振り回される日々を送っています。

さて、今回ご紹介したいのは、荒川徹『ドナルド・ジャッド:風景とミニマリズム』(水声社、2019)です。

ドナルド・ジャッド(1928〜94)といえば、四角い箱状の物体が反復される作品を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
一見無機質でつるんとした「ミニマリズム」の作品群ですが、それは一体どこから生まれ、何とどのような関係を結んでいるのか。本書では、絵画からオブジェクト作品、そして家具制作にいたるジャッドの活動をたどりながら、こうした問いを追求していきます。

主軸となるのは、アメリカのダム、高速道路、橋などの人工的な風景と、ジャッドや同時代の作家たちの実践との関係です。車に乗っているとき、道の蛇行や上下によって、周囲の風景の見え方が刻々と移り変わること。もしくは、遠くのものが小さく見え、近くのものは大きく見えること。私たちが必ず経験したことのあるこうした風景と知覚をめぐる問題に、ミニマリズムの作品は触発されていると筆者は論じます。

そのほかにも、ジャッド作品において「間違った」計算が生み出す視覚的な効果や、ビルを改装したジャッドの自宅の様子など、興味深い話題が多く登場します。生活と芸術の関係を考えるすべての人に、ぜひ読んでほしい一冊です。